USCPAがやじやじしてる

氷河期世代のUSCPAがうだうだと語ります。受かっているから言いたい放題。監査法人で勤めた後に只今事業会社で勤務中。監査法人で働くUSCPA仲間を増やしたい!!USCPA仲間大集合!!

USCPA AUDのAICPA Released Questionsを実務面から解説 #3

前回から結構間を開けてしまいましたが、最後まで頑張って続けていきたいこのシリーズの第3弾。

USCPA試験に出てくる問題は実務直結の良問ばかり!!

合格後に監査法人に入りたい人はAUDの勉強をしっかりやっておくと入所後に結構役に立ちますよ。

今回は前回に引き続き2016年のAICPA Released Questionsを16番~20番までの5問を監査法人でのエピソードを交えて解説します。

これまでの分は下記をご覧下さい。

USCPA AUDのAICPA Released Questionsを実務面から解説 - USCPAがやじやじしてる
USCPA AUDのAICPA Released Questionsを実務面から解説 #2 - USCPAがやじやじしてる

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依頼資料のことでクライアントと揉めないためにも大事なことです

A senior auditor conducted a dual-purpose test on a client's invoice to determine whether the invoice was approved and to ascertain the amount and other terms of the invoice. Which of the following lists two tests that the auditor performed?

a. Substantive procedures and analytical procedures.
b. Substantive analytical procedures and tests of controls.
c. Tests of controls and tests of details.
d. Tests of details and substantive procedures.
出典:2016 AICPA Released question AUD #16

dual-purpose testって内部統制テストと実証テストを同じサンプルを用いてやるテストのこと。ってことで答えはc。

それぞれのテストを別個にやるとなるとテストのサンプルをそれぞれ取ることになるので、クライアント的には準備するものがそれだけ多くなってしまうため相当に面倒です。そこで出来るだけ依頼するサンプル数を減らすためにとられるのがこの方法。

ちなみに監査法人あるあるなのが、テストサンプル等の資料依頼でクライアントともめる件。

ほぼ全員の監査スタッフが経験してるはず。

とにかく早く資料が欲しい会計士側と、通常業務の合間を縫って資料を準備してくれるためそんなに急には出せないクライアント側。

お互いの立場の違いにより何か問題が起こりそうなのは容易に想像できる感じですよね。ですので、dual-purpose testを取ることで少しはサンプルが減るように工夫をする訳です。

そんな中で早急に資料をくれたりするクライアントは本当に神に思えてきます。自分が経理マンだった時はそんなことできなかったし(苦笑)。

内部統制についての知識は経理マンにも役に立ちます

Manual controls would most likely be more suitable than automated controls for which of the following?

a. Large, unusual, or nonrecurring transactions.
b. High-volume transactions that require additional calculations.
c. Situations with routine errors that can be predicted and corrected.
d. Circumstances that require a high degree of accuracy.
出典:2016 AICPA Released question AUD #17

なんとなくAuditの科目って監査法人で監査をするための勉強というイメージを持ちがちですが、もちろん事業会社で経理や内部監査をするためにも役に立ちます。

それを説明するのにちょうどいいのがこの問題。

この問題は内部統制についてマニュアルの統制と自動化された統制の違いについて問われてます。

一般的に機械的にチェックできる事象(システムのアクセス権のチェックとか)については自動化された統制が向いてるし、年にそう何度も起きるものでない事象(M&Aの承認とか)についてはマニュアル統制が向いています。なので答えはa。

もちろんそういった会社の統制を決めるのは会社側の仕事。業務のフローの中でどこに統制を入れるかとか、どんな統制にするかとか決めるのはなかなか容易なことではありません。

そのためにも経理マンと言えども内部統制について体系的に学んでおく必要ありです。

その手段としては一番効率的なのはやはりUSCPAやCIA(公認内部監査人)の資格を取得すること。これらの資格は経理マン(や内部監査人)にとっても大きな強みとなりますよ。

形式的な話です

According to the PCAOB, each of the following statements is true with respect to the auditor's responsibility to communicate material weaknesses in internal control over financial reporting, except:

a. All such weaknesses must be communicated in writing to the audit committee.
b. All such weaknesses must be communicated in writing to management.
c. All such weaknesses must be communicated prior to the issuance of the auditor's report on internal control over financial reporting.
d. All such weaknesses must be communicated in writing to all stockholders.
出典:2016 AICPA Released question AUD #18

財務報告に係る内部統制監査において重要な欠陥があると判断した場合にどうするかという問題です。

そういった場合はクライアント(経営者やび監査委員会)に意見を出す前に報告をするという形式的な話。欠陥がなくても基本的にはクライアントに結果を報告するものです。

実務的にもそうそうある話でもないので、そんなもんなんだねと覚えておけば大丈夫です。仮にあったとしてもそんな時はパートナーやマネージャーが絶対注意を入れてくれるトピックなので言われた通りにすればしくじることはないですよ(笑)。

監査法人に入ると独立性について本当に口を酸っぱくして言われるよ

According to SEC regulations, each of the following non-audit services will impair an auditor's independence, except

a. Designing a management information system that aggregates source data underlying the financial statements.
b. Performing an internal audit function.
c. Preparing the audit client's financial statements that are filed with the SEC.
d. Preparing the audit client's tax return.
出典:2016 AICPA Released question AUD #19

監査を実施している監査法人等が行ってはならない業務について問われている問題です。

勉強している人はよく知ってると思うけど、監査はあくまでも第三者的な立ち位置から行わないといけないもの。

なので、監査クライアントに対する独立性について監査法人の職員たちは相当に口を酸っぱくして注意するように言われてます。個人レベルでいうとクライアントの株を持ってはいけないとか。その辺の話は以下をご覧下さい。

www.uscpayajiyaji.com

ではPCAOB監査を行う監査法人レベルではどうかと言うのがこの問題。SEC Regulation S-X Rule 2-01にその辺は細かく規定されてます。

分かりやすく言うと基本的には大体全部ダメです。

その中で例外的なのが税務申告書の作成と財務報告に係る内部統制に関連する被監査業務について。これらについては事前にクライアントの監査委員会の承認がある場合はやってもOKという事になります。という事で答えはc。

外部のレビューには気を揉みます

At least how often should the PCAOB inspect a registered public accounting firm that regularly issues audit reports to 50 issuers?

a. Annually.
b. Every two years.
c. Every three years.
d. As requested by the firm.
出典:2016 AICPA Released question AUD #20

監査法人も実はきちんと監査を行っているかを外部の機関からの検査やレビューを受けて品質チェックをされてます。

これはそんな品質チェックに係る外部(この問題だとPCAOB)レビューについての問題。

PCAOBのレビューはBig4のような大きな監査法人だと毎年入り、小規模なファーム(上場クライアント100社未満)だと3年に1度入ります。

品質チェックはもちろん全クライアントワークについて調査をする訳ではなく無作為に選ばれるのですが、選ばれたクライアントの関係者にかかる心理的プレッシャーは相当なもの

そのための準備も大変で、検査官とのやりとり(基本的にマネージャー以上がされている)にも相当に気を遣うし、何か大きな指摘なんて受けた日にはとんでもないことにもなりかねません。

レビューの時期となるとどこのジョブが検査に当たったかの噂が事務所内に飛び交う程のビッグイベントです。

そのためパートナーやマネージャーはいつ検査に当たってもいいように、常日頃がら調書のクオリティーには目を光らせてます(それがスタッフ的には上の人の自己満的なアディショナルワークに思えて苛立つこともあるのですが・苦笑。でもそれらの対応もすごく大事な仕事です)。

この検査もPCAOBのレビュー、日本の公認会計協会のレビューとか何種類もあったりするのでいつか必ずどこかで当たります

当たったことがない人は相当な強運の持ち主です。

ただし検査は基本的には上場企業のようなビッククライアントのワークに対して行われるものなので、小規模な非上場会社とかばかりやっているとそこまで関係のない話だったりもします。

ここまでで20問終了

全50問中、合計20問の解説が終了です。

AUDの問題を通じて監査法人の雰囲気が少しでも伝わればと思うのですが、なかなか文字にして伝えるのは難しい(苦笑)。

とは言え、ここまでの解説を通じて思ったのはどの問題の事象についても監査法人で働く中で一度は経験していることばかりであるということ

私は現時点ではシニアスタッフなので監査法人でのキャリアはまだまだ短いのですが、それでもこれまでを振り返りながら問題を解いてみるとそれなりに思い出すことがある感じ。

日本の会計士試験の問題がどんな感じなのかは知らないけど、やっぱUSCPAのAUDの問題は実務直結なのだなあと実感します。