5月も半ばを過ぎると監査法人で働く会計士が最も憂鬱になる3月決算がそろそろひと段落する頃。
私が主査として関与してた上場企業クライアントも(一応)予定通り意見を出すことができました。ほっ。
とは言えみんな相当に命を削って仕事をしていた感が半端なく、チームメンバーも結構きつそうだったのは否めない感じ。
私個人的には(大して長くない)監査法人生活の中で一番辛かった1ヶ月でした(苦笑)。
そこで今回は上場企業の期末監査がどんな感じだったかをご紹介します。
微妙なプレッシャーの中で主査した上場企業監査の1ヶ月間はこんな感じ
意見日1ヶ月前 - まだ余裕がある時期なのですが
私が関与しているクライアントだと意見日の1ヶ月前頃から期末監査モードに突入します。
大体3月末(決算日)に全国いくつかある倉庫に棚卸立会に行って、4月の第1営業日に本社で現金実査をやって、一旦そこで少し休みを入れてから期末監査スタートって流れ。
とは言え4月の頭頃はまだ会社は年度末決算を行っている最中なので会計監査的にはあまりできることはなく、どちらかというと内部統制を中心に見ていきます。
内部統制監査は会社の統制に沿って必要な書類に承認があるかとかそういったことを見るだけな作業が8割~9割なので、作業的には結構楽勝な部類。
その代わり大会社だと統制もかなり数あるので終わらせるのは相当に時間がかかるし、ワークの内容的にも単調なので結構辛い作業。それでもスタッフがどんどんやっていきます。
この頃は期末監査と言えどまだまだ余裕がある時期ですね。
で、主査は何をしているかと言うと、さらに上のマネージャーがその会社で気になる点をどんどん洗い出してきて確認するように指示を投げてくるのでひたすらその対応。意見日までまだ1ヶ月と中途半端に時間があるのでどんどん仕事を振ってきます。まだ1ヶ月あるのに少しはラクしたいと思いながら淡々と仕事をこなしていきます。
上場企業監査は外資系企業のリファードワークや比較的小規模で非上場の日本企業の監査と比べると、マネージャー以上が入れる気合の量というか熱量が全然違います。
意見日2-3週間前 - ちゃんと終わるのか不安を抱えてます
4月も半ばに入っていくとクライアントの決算も進んできてるのでちらほら資料が届き出します。
いよいよ本格的に期末監査開始と言ったところでしょうか。この辺から土曜の休みがなくなります。
主査的には残りの日数と全員の残タスク数を毎日数えながら、『ちゃんと終わるよね』と不安が募る時期。マネージャーからのオーダーも相変わらずガンガン入ってきます。
ちなみにこの頃は現場によってはそろそろ忙しさから場の雰囲気がギスギスしだす頃。
余裕をなくした主査(とかマネージャー)が常時苛立ってたり、激務でモチベーションが下がったスタッフの素行が悪くなったりして段々現場の雰囲気も悪くなっていき、最終的にはチームが崩壊してしまうなんてことはよくある話。個人的には一番恐れていたのがこれ。場の雰囲気が悪くなるとパフォーマンスも一気に悪くなるからね。
幸いにも私がいたチームは仲の良さと団結力は部署の中でも折り紙付き。なので私の不安はありがたいことに杞憂に終わるのですが、チームマネジメントが上手くいかないリスクはやっぱり主査をやっている人達やそれ以上のマネージャー達にとっても不安要素の一つであることは否めません。
私のチームの場合はスタッフ達が相当に大人の対応ができる人間的にしっかりした人達だったことに尽きるのですが、意見日までずっとそんないい感じを保てたのは結構すごいこと。お勉強だけできて人間的にNGな人が意外といたりするこの業界的にはなかなかレアなケースです。
意見日1週間前 - 当然GWはないし、体にガタがくるし
5月に入って意見日が迫ってくると当然の如くゴールデンウィーク返上で働きます。まさにデスマーチ。
ちなみにクライアントはもちろんお休みのため、監査チームは事務所で作業中。
仕事もそろそろ大詰めを迎えていきますが、この辺から監査調書をレビューしたマネージャー(やパートナー)からのダメ出しが相当に入ってきます。これは相当に重たいワーク。
ついでに激務で若干イライラしてきたマネージャーからの八つ当たり的な𠮟責なんてのもセットでやってきたりも。
普段は優しいマネージャーであっても期末監査となればキャラが変わります。そういったことが日常茶飯事なのが期末監査です。大して気にしてはいけません。
とは言え、私的にはいよいよ体にガタが来たのか痔になる始末。
これは辛かった。
普通に座っていても痛いし、当然パフォーマンスも若干下がる最悪の展開。常時ケツが痛いこの感じ。やる気も失せます。
少しても治さないとと仕方なく手を出したのは人生初のボラギノール。
ドキドキしながらトイレでボラギノールを持って佇んでるのは相当に情けない姿です(苦笑)。座薬自体が生まれて初めてだったし。
『GW返上で働いて激務となんか良く分からない色々なプレッシャーに耐えた挙句、痔かよ・・・。』とマジで凹みます。
ただ、そんな事で心が折れている場合ではありません。
何しろ意見日まであと1週間。むしろ社畜魂の見せ所。最後の踏ん張りとばかりに気合を上げて行かないタイミングです。
この辺から監査報告書とかクライアントに提出する書類をドラフトしだしいよいよ終わりを感じてきます。
意見日3日前 - Ptr、Mgrからのダメ出し対応中
意見日3日前。チーム的にはそこそこ終わりが見えだした頃。
手続きとしては計算書類の開示チェックを除いては概ね終わってます。まだマネージャーやパートナーからのダメ出しは相当に残っているけど。
なのでスタッフは開示チェックをしつつ、ダメ出し対応を並行して進めていきます。スタッフ的にはそろそろ余裕が出てきだしたよう。これまでみんな休みも返上して働いていたし、何となく表情も辛そうだったので余裕がありそうな素振りが見えてきて主査的にはちょっとほっとします。
主査は何をしているかと言えばスタッフからのダメ出しについての相談に応対しつつ、監査の完了手続きを中心に作業中。
完了手続きも意外とタスク数が多いので厄介なワークだったりするのですが、さすがにここまでくると監査が終わらないかもしれないとかそういう不安はなくなってきます。
意見日前日 - 今日さえ乗り切ればと思いながら仕事します
いよいよ意見日は明日。ってことは今日さえ乗り切れば一応終わり。
それでもマネージャーやパートナーからのダメ出しは結構残っているけど。
上場企業の監査なのですんなり終わりを迎えれるものではなく最後の瞬間まで色々あったりするのですが、とりあえずあと1日だしってことでみんな黙ってタスクをさばいていきます。
意見日1日前は時間ギリギリまで作業をすることが多く、例年午前様になってる気がします。24:00を過ぎて晴れて意見日となったら終了的な。
終了後にタクシーに乗って家に帰る時に窓を開けて夜風を少し感じつつ、一応終われてよかったとほっとしながら景色を眺めるのは私のお約束です。ちょっとプレッシャーから解放された気分になります。
翌日はクライアントへの結果報告。これで一旦終了です。
まとめ
USCPAが微妙なプレッシャーの中で主査した上場企業監査の1ヶ月間はいかがでしたでしょうか。
ちなみに今回のクライアントは上場企業なのでこの後は有価証券報告書のチェック等の金商法目的の手続き(今回意見を出したのは会社法監査)もありますが、それは6月の話。
監査手続き大体は今回で終わらせているのでそこまでやることもなかったりします。これは比較的楽勝です。
個人的な今年のハイライトはやっぱり痔になってしまったこと(苦笑)。
意見日目前の気持ちをトップギアに入れようするタイミングでのものすごく尻が痛くなったこともあり相当に凹む出来事だったのですが、そんな中スタッフが気を遣って座り心地のいい椅子を別のところから持って来てくれるなど、みんなの優しさが身に沁みるワンシーンもあったりとなかなか思い出深い出来事でもありました。
また、記事を読んでて思った方もいるかもしれませんが、上記の中ににUSCPAの要素が全く入ってないですよね。USCPAと言えど日本の監査法人で監査要員として働くからにはJCPAと全く同じことをするのです。監査そのものは日本もアメリカも大体同じですしね(むしろUS監査の方が厳しい位)。
なかなかしんどい部分もありますが、まだまだ監査法人におけるUSCPA向けの採用も活発ですし、監査をやってみたい方は数年だけでも是非入ってみると人生面白くなるかもしれませんよ!!